はじめに

最近、学校では図画工作の時間が減っています。子どもが図画工作をする意味はいったいどこにあると思いますか?

絵画教室の目的

絵画教室は「上手な絵が描けるようになること」が目的の場所ではないと思います。いい絵が描けるようになってほしいと思いますし。絵に自信を持てて、自分を表現する一つの方法になってくれればうれしいと思います。絵画教室の一番の目的は、絵を描くこと、物を作ることを通じて、心を育てることであると思います。花を見て、上手に花を描くことが目的ではなく、色に感動し、匂いを嗅ぎ、手で触ってみて、花に感じたことを心で大きく育てることが目的です。結果として絵が生き生きとしてくるならば、それは本当に素敵なことだと思います。

自分の手をつかうこと。自分の手をつかうこと。

日常から手を使う機会が減っています。スマートフォンやタブレットの普及で画面をタッチするだけで、さまざまなことをすることができます。3Dプリンターのようなものも発明され、苦労せずに造詣を楽しむこともできます。トイレの蓋も自動で開き、自動で水が流れ、手を使うことがなくなりました。便利ですが、実感に乏しくなっていると感じます。
鉛筆ひとつ削るにも、電動であっという間に削ることを考えれば、昔のようにカッターナイフの使い方を学び、苦労して一本の鉛筆を削ることなど必要がないことに感じられるかも知れません。しかし自分の手で苦労して時間をかけ、一本の鉛筆を削る感覚、削れるようになった時の感動は、電動では得られないものです。時にはカッターで指を切ってしまうこともあるかもしれません。、でもその経験が人として感性を豊かにしてくれるのだと思います。
なくなれば「買えばいい」と道具を大事にできない子が増えています。

自分で見つけて、考え、工夫すること。

ゲームやアニメは楽しいかも知れませんが、子どもから自主性・感性を育てる時間を奪ってもいると思います。楽しいことは?と聞いても「ゲーム」しか出てこない子どもが本当に増えています。近年はYOUTUBEが盛況になり、体験型もあるようでその点では少し変化がみられるのかも知れません。今まで絵画教室をしてきて、ゲームばかりしている子と、実際にいろいろな経験をしている子では、感性が違います。ゲームは大人に都合よく与えられた楽しみであって、楽しくともすべてが受け身なのです。
子どもは何もないところからでも遊びを創りだす名人です。友達と制作をしながら遊んでいて「いいこと思いついた」そういうセリフが出てくる時、子どもの目はきらきらとしていて、自分の思いつきを実践しようと努力し、友達と楽しい発見を分かち合おうとします。
子どもたちがそのように自分で楽しさを見つけて、考えて、工夫する機会が少なくなっていると感じます。大人から楽しさを与えられ、豊かに物を与えられることで子どもは受け身になり、時間に追われることが子どもから工夫し、失敗して学んでいく機会を奪っています。
またこれからの世の中は消費社会ではなく、すでにある物をいかに使うか、自分で創意工夫することが大切になってくると思います。困難に出会った時に、くじけず柔軟に失敗を楽しみ、工夫して乗り越えていく力が必要です。
教室では、自分で楽しさを発見し、考え、工夫し、失敗しながら作り上げていくことを学んでほしいと思っています。

本物に触れ、豊かなアンテナを持つこと。

テレビやインターネットを通じて、さまざまな知識があふれています。今の子供たちはたくさんの情報が与えられていますが、実際に聞いてみると、虫を捕まえたことがない、ナメクジを見たことがない、海で泳いだことがないなど驚かされることも多いです。
実際に目で見て、触って、音を聞いて、肌で感じないと本当に知ったことにはなりません。肌で感じた体感は子どもたちの中に蓄えられ、感性を豊かにします。特別な経験でなくてもかまいません。友達と公園で遊んだこと、学校の帰り道のこと、ご飯を作っているお母さんの後ろ姿、車を運転するお父さんの姿、普段の生活からでも多くのことを感じ取ることができるはずです。日常からいろいろなことを感じて、自分で膨らませて表現できるアンテナを持ってほしいです。
情報や便利なものであふれていますけれども、表面だけで、本物から遠ざかっているように感じています。本当は子どもたちにはもっと土や自然に触れてもらいたいと思っています。本物に触れ、感じたことを表に現す。表現することで豊かな感性が育ってほしいと願っています。

結果ではなく過程が大切。

分からないことがあればスマホですぐに調べることができる。効率化でなんでもすぐに結果がでることが多いです。生きていく上で、選択出来ることが多いことは幸せなことですが、同時に子どもにとっては、やらないといけないことも増え大変であるとも言えます。そしてそこに大人から結果が求められているような気がします。結果も大切ですけれども、それ以上に大切なのは過程であると思います。大げさに書きますが、生きていくこともそうですよね。人生を豊かにしてくれるのは結果ではなくて、その結果に行きつくまでの過程ではないでしょうか。結果だけを求められると子どもは追い詰められてしまいます。たくさん失敗をし、遠回りをした過程が人生や、心を豊かにしてくれると思います。大人には焦らず、子どもが自分で選択して失敗することを待ってあげる余裕が必要なのだと思います。

なによりも「絵を描く」ということは子どもたちにとって、本来「楽しい」ものなのです。
少しでも多くの子どもたちが、制作を楽しむことができ、大人たちの理解のもと、子どもたちの作品が元気を与えてくれるような世の中になってほしいと思います。

思えども、なかなかうまくいかず、先生も苦労の連続ですが。。😂

Posted by tokuisenbei